行雲流水の如く

 梶浦直樹の日々雑感

美しい二十代。

十二月四日(晴) 美しい十代は、昭和三十八年に三田明さんが歌っていた曲で私の生まれた歳であるから知る由もない。美しい十代か・・・。私の十代は決して美しいものではなかった。私が初めて買ってもらったレコードは加山雄三さんの「旅人よ」である。確か赤かったように記憶する。それをポータブルのプレイヤーで聴いていた。

最近、姪っ子がレコードを聴きたいと言い出した。二十代の頃、格好をつけて毎日ジャズを聴きながらバーボンを一人で飲んでいた.その時に買ったレコードプレイヤー、アンプ、スピーカーが今もある。プレイヤーはテクニックス、アンプはサンスイ、スピーカーはオンキョーで揃えていた。ジャズのレコードは八百枚くらいあったがすべて売ってしまった。そのプレイヤーを見て姪っ子が聴きたいと言うのでアンプに線を繋いでスイッチを入れてみたが、アンプから煙が出てきたのでやめた。二十年以上もスイッチを入れていなかったので埃まみれになっていたのだろう。直すくらいならリサイクルショップで買ったほうが安いのかな。

夜は滅多に見ない民放の番組で「ものまね王座決定戦」を見る。二十代の頃、ものまねの仕事をしていたのでどうしても見てしまった。それにしても私の時代と違ってレベルが高すぎる。当時はマスターの友人という事で店で歌っているとタレントの清水あきら氏が入ってきた。亡くなった弘田三枝子さんもすすきのでの営業が終了した後に何度か来ていた。清水あきら氏もすすきのの営業の帰りだろう。私のステージの前に少しネタを披露していた。そして私のステージとなる。歌う前に客からのチップを受け取り、始まる。清水あきら氏のテーブルの前に行き、チップを貰う。千円だった。一回りしてから始まるのだ。

数が月後、テレビのものまね王座決定戦を見ていると、清水あきら氏が出ていた。そしてネタを見るとどこかで見たようなネタ。そうです私のネタが千円で取られていた.まあこんな事を思い出しながらものまね王座決定戦を見ていた。決して美しい十代でも二十代でもなかった。あ、ものまねはもう出来ませんよ。すっかり錆びついてます。